中国女子テニス選手暴行事件・ウイグル人権問題・香港民主化運動弾圧から日本人は目を背けてはならない

2022年2月の北京五輪を控える中国では、あるスキャンダルで激震が走っています。それは元ダブルス世界ランク1位の女性テニス選手ポン・シュアイ選手による、中国共産党高官から受けた暴行の告発がSNSから発信されたことによります。ポン選手が告発に使ったSNSアカウントはすぐさま消去され、彼女自身もその後失踪したことで、世界からの批判が中国へ集まり、北京五輪ボイコットへの動きも見せています。

北京五輪を控える中国に走った激震

ポン・シュアイ選手の告発は、近年世界中で巻き起こった「# Me too」そのものと言えますが、何より中国が受けた打撃は言うまでもありません。なぜなら中国共産党幹部が公の場において、名指しで暴行を告発されたのは前代未聞だったからです。元々中国が抱えている人権問題（ウイグルのジェノサイド、香港民主化運動弾圧、チベット問題、南モンゴル等）が世界中から批判・注視されている最中、今回の政府高官のスキャンダルが明るみになったことで、中国にとっては大打撃となりました。

ポン・シュアイ選手のメールが中国国営放送から報道？

ところが先日、中国国営放送から驚きの報道がされました。それはポン選手本人による告発を否定したEメールの文章です。「私は暴行されていないし、失踪もしていない。家で休んでいるだけ。私は中国のテニスをもっと推進していきたい」といった内容で、失踪前に自身のSNSで公表した内容を180度否定するものでした。そのため、このEメール自体が本人のものではなく、中国当局が出したのではないかと見られています。

バッハ氏は「彼女が安全だという確信を得た」とコメント

ところが、このメールを唯一そのまま受け取ったとされるのがIOC会長のバッハ氏でした。親中派として有名なバッハ氏は、この事件を収束させようとしているかのように「彼女が安全であるという確信を得た」と発表。これに対し、人権団体ヒューマンライツ・ウォッチは「中国が発表した情報を鵜呑みにするべきではない」と、厳しく批判しています。

中国に対する厳しい目

しかし、IOCにはバッハ氏のような人物ばかりではありません。ディック・パウンドIOC委員は、11月20日付の声明で「もし早急に解決されなければ、IOCが通常より強硬な態度をとる可能性もある。大会中止まではいくとは思わないが、どうなるかは誰にもわからない」とし、北京五輪中止を示唆するコメントを表明しています。また、今回ポン選手から事件を否定するメールを受け取った女子テニス協会（WTA）のスティーブ・サイモンCEOは、「選手の失踪に関する説明がない限り、我々は進んで中国から事業を撤退させる。なぜなら、これはビジネスよりも大きな問題だからだ」とし、強い姿勢を示唆しています。

北京五輪を巡る各国の動き

アメリカ・バイデン大統領は、ポン選手事件を含めて中国が抱える人権問題を追及する姿勢を示し、同盟国による北京五輪の外交ボイコットを検討すると発表しました。続いで、イギリス・ジョンソン首相もそれに呼応する形でボイコットを検討中であることが報道されました。こうした海外の動きに対し、日本の岸田首相は「日本の立場で検討する」と回答しました。これは外交ボイコットまではしないことを暗に示唆しています。首相の念頭には、中国との経済的な関係（貿易、ビジネス等）がある限り、強い態度は取れないという考えがあるのではと推測されています。

しかし、日本がこのまま北京五輪を支持することは、ポン選手の事件のみならず、中国で起きているウイグル人のジェノサイドをはじめとした様々な人権問題についても目をつぶることになってしまう恐れがあります。私たち日本国民は、日本政府の正式な態度表明を注視する必要があるでしょう。